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東京高等裁判所 昭和27年(ネ)2129号 判決 1954年3月08日

控訴人(附帯被控訴人) 宇田川厚 外二二名

被控訴人(附帯控訴人) 東京芝浦電気株式会社

〔抄 録〕

当事者双方の陳述した主張の要旨は、左記の外は、原判決の事実に記載するところと同一であるから、これを引用する。

控訴人(附帯被控訴人)(以下単に控訴人という)等訴訟代理人は、「罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条の規定は、罹災土地に存する借地権の登記がはじめからないため、登記簿上その借地権の存否が不明な場合に適用あるものである。被控訴人(附帯控訴人)(以下単に被控訴会社という)は、はじめ本件の地上権の登記があつたのに、その地上権の存続期間満了後期間延長の登記をしなかつたし、又登記簿の滅失後回復登記もしなかつた。このような場合には右法条の規定の適用はないものと解すべきであるから、被控訴会社はなんら対抗要件をそなえない本件の地上権を以て第三者である控訴人宇田川厚を除くその他の控訴人等に対抗することができない。」と述べた。(中略)

理由

(前略)(二) 控訴人等は、被控訴会社の本件地上権には戦災都市借地借家臨時処理法第一〇条の規定の適用がない旨を主張する。おもうに、罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条の規定の趣旨は、罹災直後の罹災地における社会・経済界の混乱により、罹災借地権者が借地権の設定若しくは取得登記又はその変更、回復若しくは更正登記を得ることが困難であるばかりでなく、建物の築造も容易でないため、借地上の建物の登記によつて借地権を保護する措置を構ずることも困難である情勢の下では、たとえ不動産取引の安全を犠牲にするところがあつても、罹災借地権者の有する借地権の保護を厚くする必要があるから、その借地権については、対抗力に関する一般原則の例外を設け、なんら対抗要件をそなえなくとも、これを以て第三者に対抗することができるものとして、罹災借地権者の地位の安全を図つたものであつて、その必要あることは、借地権につきはじめから登記が存在しない場合と登記は存在したがその後、変更、囘復若しくは更生登記をしない場合とを問わないと解すべきである。故に本件地上権についてその取得登記を得ていた被控訴会社が地上権の存続期間変更の登記をしないし、又登記簿の滅失による回復登記をしなくとも、罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条の規定の適用を受け、本件地上権を以て、同条所定の期間内に本件宅地につき権利を取得した第三者に対抗することができるものといわなければならない。故に控訴人等の右主張は採用しない。(下略)

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